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「小暮写眞館」あらすじ・ネタバレ

2013.10.25 (Fri)
・筆者:宮部みゆき

高校1年生の花菱英一(花ちゃん)は、平凡な父母の秀夫と京子、弟・光(ピカ)の4人暮らし。父母が結婚20周年の記念に、念願のマイホームを購入した。

その家は、元々、写眞館だった。一家は、築50年の家をリフォームもせずに、そのまま残して暮らしていた。ショーウインドウも、「小暮寫眞舘 KOGURE PHOTO STUDIO」という看板をそのまま掲げて住み始めた。

1) 幽霊が出る写真館


看板のせいで、「小暮寫眞舘」が再び開店したと思い、美土里という女子高生が訪れる。彼女は、小暮寫眞舘で現像された写真を持ち込んだ。それは、フリーマーケットで買ったルーズリーフに挟まれていたそうだ。

その写真というのが、心霊写真らしいという。不自然な位置に女性が写り込んでいる。女子高生は、処分に困り、その写真を持ち主に返して欲しいという。

写真には、3人の家族が写っていた。その3人は、タバコの不始末で焼死したのだという。そしてこの家族・三田家がのめり込んでいたのが、新興宗教「神光真の園教会」。

「神光真の園教会」に乗り込んで調査をした英一は、"幽霊"と思しき影の女性が、三田家の長男の元嫁であった理恵子だと判明する。理恵子は、存命であり、「元夫は好きだったけど、新興宗教には入りたくなかった。義母にしつこく勧誘され、教員として学級崩壊に悩んでいたとき、神罰だといわれ、それが原因で離婚してしまった」と語った。

理恵子は再婚し、幸せに暮らしているという。「辛い、苦しいという思いを、この写真が吸い取ってくれた」と彼女は語っていた。

一方、自宅に「小暮寫眞舘」の主の幽霊が出る、と不動産屋から聞かされる。両親は、それを承知で住宅を購入したのだという。

2) 飛べないカモメ


自宅に強盗が入った、と聞いて慌てて帰宅した英一。だが、父母は何事もなかったかのような表情をしていた。

強盗は、幽霊を見て金縛りにあったと話していたそうだ。「小暮寫眞舘」の主、小暮泰治郎が出たようだ。この一件もあり、英一は小暮泰治郎の娘・石川信子に会いに行く。そこで、「小暮寫眞舘」をそのまま残してくれることに、信子は感謝する。

その後、弟の同級生・翔が写った写真に、黄色いカモメが写っていることに気づく。翔は、登校拒否中で、フリースクールにかよっている。成績も友達関係も問題ない。登校拒否の原因を探る英一。

風変わりなかもめが、「カモメの名前」という映画のキャラクターであることが判明する。その映画をヒントに、「父親に全て服従する母親に、自分の生き方を見つけて欲しい」、という思いを持っていることを突き止める。登校拒否は、翔の父親への抗議だったのだ。英一が促し、翔は母親に自分の思いを伝えるのだった。

3) 縁側の涙


同級生のテンコに呼び出された英一は、軽音楽部に所属している千春から写真を手渡される。その写真は、縁側で撮られたものであり、家族3人の泣いている顔が心霊写真のように窓ガラスに映っている。

その写っている家族は、軽音楽部OBの河合公恵と両親だという。写真を撮ったのは、公恵の婚約者・足立文彦。その4ヶ月後、足立から一方的に婚約を破棄したいと申し出たそうだ。

その理由を探る英一。足立は、河合家の工場(河合精鋼)とも取引があったメーカーに勤めていた。そこで、河合精鋼の海外進出を提案し、受け入れた父親は、昔からの小口の客との取引を中止。海外向け製品のみを作ることに決めていたという。

だが、足立の会社は、海外進出を中止。その後、足立は会社をクビとなり、父親に顔向けできなくなった足立は、公恵に別れを切り出したのだった。足立は、公恵に謝りに行くことを決める。

英一が家に帰ると、父母が喧嘩していた。理由は、末期の肺癌で危篤状態と知らされた祖父に、父親が会いに行かないことだった。父親が祖父に会いに行かないのには、理由があった。

英一には、妹・風子がいた。その妹は、インフルエンザ脳症で亡くなった。そのせいで、母親は親族から責められた。思い余って、離婚を父親に申し出たのだ。その件があり、父親は親族から縁を切ったのだ。

だが、母親は夫に、「お父さんに会いに行って」と口論になるほど願い出ていたのだった。結局、父親は会いに行き、死に目にあうことができたのだった。

4) 対岸の光


弟・ピカは、夜尿症が始まり、描く絵もおかしくなっていった。その原因は、父母の夫婦喧嘩だった。

ピカは、自分のせいで姉・風子が亡くなったと考え、悩んでいた。風子がインフルエンザ脳症を発症する前、ピカが体調不良で看病を受けていたのだった。ハナはそんな弟を抱きしめる。帰り道、マンションのベランダに風子らしき姿を見つける。その少女に、ピカは手を一生懸命振るのだった。

一方、「小暮寫眞舘」の物件を扱っていた不動産屋の従業員・順子は、母親が訪れてきたことに動揺。睡眠薬や精神安定剤を過量内服してしまう。それを見つけたハナが背負って病院へ駆け込む。

事情を聞くと、順子は母親の恋人に乱暴されていた。それを母親は見て見ぬふりをしていたのだ。耐えられなくなった順子は、家を飛び出したのだという。

その病室で、英一は秘密を打ち明ける。「実は…風子がインフルエンザ脳症になる前、母親に看病の邪魔をして怒られた。その夜中に風子の具合が悪くなったのを見つけたけど、また母さんを起こして怒られるのがイヤで、黙っていたんだ…」と、後悔していたことを打ち明ける。

そして、責められている母親を助けられずにいたことを後悔していたことも明かした。英一は、"ケジメ"として亡くなった祖父の納骨式に出席することになった。その席で、「うちは長い事、御無沙汰をしてしまいました。申し訳ありませんけど、それは、これからも変わりません」ときっぱりと宣言するのだった。

「身内だからって、言っていいことと、悪いことがあります。時間が経ったって許せることと許せないことがあります」と言い放ち、会場を後にする。

帰り道、順子はインスタントカメラを買い、英一を撮る。そして、別のカメラで自分も撮るように言った。順子は、「母親と決着をつける」と言い、それから姿を消すのだった。

翌年、大学生になった英一のもとに、差出人のない手紙が届く。そこには、菜の花畑から走ってくる電車の写真が入っていた。英一は、「あんた、もう、走り出してるんだな」とつぶやく。


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