東野圭吾「ラプラスの魔女」あらすじ・ネタバレ
2015.05.23 (Sat)
簡単なあらすじ
以下、時系列に沿って記載する。
1) 映画監督・甘粕才生は、自分の思い描く理想の家族とは程遠い、自身の家族に嫌気が差していた。そこで、長女が硫化水素を自宅で発生させ、自殺を図ったようにみせかけ、妻・息子もろとも全て殺害することを思いつく。
2) 甘粕才生は、映画関係者の水城義郎らを替え玉として利用し、アリバイ工作した上で、自ら自宅で硫化水素を発生させた。全員殺害するつもりだったが、息子・謙人は、植物状態ではあるが、生き残る。
3) 脳外科医・羽和全太朗は、先進的な研究を行う国立機関「数理研究所」に所属しており、研究段階の脳細胞移植手術を謙人へ行うことを才生に提案し、才生は受け入れる。この治療により、謙人は意識を取り戻し、驚異的な演算能力で物理現象を予測することで、"未来予知"が行える能力を得る。また、謙人は植物状態であった時に、父・才生が凶行に及んだことを父の言葉で知っていた。そのため、記憶を失った振りをしていた。
4) 「数理研究所」で療養していたところ、羽和全太朗の娘・円華と出会う。円華と仲良くなった謙人は秘密であった自分の脳力について円華に明かす。円華は、母の実家帰省時、竜巻に巻き込まれて母を亡くしてしまい、謙人と同じような予知能力が欲しいと切望する。結果、円華は父に実験台になることを提案した。研究者としての欲求に勝てなかった父は、円華に手術を施す。かくして、円華も謙人と同じ能力を獲得する。
5) ある日、謙人は父・才生が、自分を「長女の自殺によって、家族を失ってしまった悲劇の主人公」として仕立て上げ、書籍の出版、映画を制作しようとしていることを知る。怒りを覚えた謙人は、父・才生や、事件に関わった者へと復讐することを決意する。
6) 謙人は、父のアリバイ工作に関わった映画プロデューサー・水城義郎の妻・千佐都に近づく。千佐都は、最初から夫の財産目当てで結婚していた女だった。千佐都に、「生命保険を得られる」と言って、水城義郎を事故死させる計画を提案。千佐都は、その提案を受け入れた。
7) 温泉旅行に夫を誘った千佐都は、謙人に指示された場所へ義郎を誘い出す。その位置は、謙人が発生させた硫化水素が高濃度となり、水城義郎は死亡した。千佐都に誘い出させ、同様の手口で俳優・那須野を殺害した。
8) 最後に、千佐都を使い才生をある場所へと誘い出す。そこは、才生が映画撮影で使用した廃墟だった。父に家族を殺害した動機を聞き出し、その身勝手な理由に謙人は怒りを露わにする。才生は、謙人へと拳銃を向けるが、そこへ、ダウンバーストが襲い、廃墟は崩れ落ちる。
9) 謙人は、父とともに死ぬ覚悟だったが、尾行していた円華に廃墟の一部が事前に破壊されており、謙人は死を免れた。父のとどめを刺そうとするが、円華に止められ、謙人は「映画製作をするのだったら、世間にお前が家族へしたことを公表する」と父に言い残し、立ち去る。才生は、生きる意味を失い、病室で自殺した。
起:事件発生
羽和円華には、ある特殊な能力があった。現在のスーパーコンピュータでも敵わないほどの演算能力で、未来に起こりうる事柄を予測することができるのだった。天気も予測することができ、確実に言い当てることができた。
ある日、円華は温泉地で起こった硫化水素で男性が死亡したという新聞記事を見かける。その男性は映画プロデューサー・水城義郎であり、若い妻と温泉旅行に来たところ、男性だけ硫化水素を吸ってしまい、死亡したのだという。
そのニュースを知った円華は、"とある人物"が関与しているのではないかと考え、お目付け役である桐宮玲、元警察官のボディガード役である武雄徹を、大雪でクルマが立ち往生していることを利用して撒く。
承:第二の事件
大学で環境分析化学について教鞭をとる青江修介教授は、警察の依頼により、硫化水素で男性が死亡した一件を調査することになった。死亡した男性・水城義郎の妻・水城千佐都が殺害したのではないか、と警察は疑うが、青江には現場の状況から、意図的に硫化水素を吸わせることは困難ではないか、と結論づけた。
そんな中、現場付近の調査中、若い女性が現場にやってきた。死亡事故が起こっている現場に、わざわざやってくる女性を不審に思う。
その後、別の温泉地で俳優が死亡した。死因は同じく、硫化水素であった。青江は、連続する事故に興味を持ち、新聞社の依頼で、再度、調査を行うこととなった。その場にも若い女性がやってきたため、青江はたまらず声を掛ける。その女性は、身元を明かすのと引き換えに、立ち入り禁止区域である現場に入ることを求める。了承した青江に、女性は「羽和円華」と名乗った。円華の風変わりな様子に、青江は興味を持つが、円華は姿を消してしまう。
転:映画監督・甘粕才生
刑事である中岡祐二は、最初に死亡した水城義郎の母に、「息子は妻に財産目当てで殺されそうになっている」と以前、言われていた。だが、実害があるわけではなく、単なる推測であったため、中岡は真剣に取り合わなかった。だが、実際に水城が死亡したこともあり、中岡は、妻・千佐都のことを疑い、捜査を行っていた。
一方、青江教授もまた、2つの事件について調査を行っていた。その中で、犠牲者の共通点を探っていると、関係者である映画監督・甘粕才生なる人物が、家族を自宅に発生した硫化水素で亡くしていることを知る。
青江は、甘粕自身が書いていたブログを読むと、「長女が、母親と不倫相手との間に生まれた子であると知り、心を病んでしまった。そして、彼女は自殺を図り、巻き添えを食ってしまった妻は死亡した。息子は、一命を取り留めたが、植物状態になってしまった」ということを知る。
さらに、ブログには、息子は脳神経外科医・羽和全太朗の手により、先進的な脳外科手術を受け、意識を取り戻し、意思疎通が図れるようになっていた様子が書かれていた。手術を担当した医師の名字と、同じであることもあり、この一件も、羽和円華と関係があるのではないか、と青江は考えた。
さらに、円華の足取りを追う彼女のお目付け役である桐宮玲がアプローチをかけてきたことから、円華はこの一連の事件について何かを知っているのではないか、と青江は推理した。以前、円華に会った際に教えてもらった連絡先に電話をし、青江は甘粕才生の息子・甘粕謙人のことを引き合いにだし、円華をおびき出すことに成功する。
円華は、事件のあらましを教えるのと引き換えに、この件から青江に手を引かせようとした。事件がどのように起こったのか、ドライアイスを発生させ、事件を再現する。「時間・環境を選びさえすれば、同様の事象が起こせる」ということを青江に示したのだった。だが、そんなことができるのは、スーパーコンピュータを凌駕するような演算能力がなければならない。そんなことが、人に可能なのか、と青江は半信半疑だった。
結:謙人との再会
甘粕謙人は、3人目のターゲットに狙いを定めていた。その3人目とは、父・甘粕才生だった。最初の犠牲者・水城義郎の妻・千佐都に指示し、才生をおびき出した。千佐都は、水城義郎を"事故死"させ、保険金を手に入れるため、謙人と取り引きしていた。2人目の犠牲者も、千佐都が事故現場まで案内をしていたのだった。
甘粕才生が家族を失った硫化水素の事件は、才生自身が引き起こしたものだった。温泉地で死亡した水城義郎らも、実はその事件にアリバイ工作などで関わった人物だったのだ。才生は、自分の思い描く"完璧ではない家族"に嫌気がさし、妻や子供を抹殺することを決意したのだった。
植物状態となった謙人だったが、実は意識があった。その病室で、父・才生は自身が事件を起こしたのだと口走り、それを聞いた謙人は、復讐心を抱くようになった。
羽和医師の脳外科手術で、驚異的な演算能力を手にし、物理現象を予測することができるようになった謙人は、療養していた数理研究所で円華に出会う。円華に、自身の能力や、その能力を獲得したことを打ち明ける。
その後、円華は、母を竜巻に巻き込まれて亡くし、「あのようなことを二度と起こしたくない」と、自ら謙人と同じ手術を受けたい、と父に申し出る。父・全太朗は悩むが、研究者としての欲求には勝てず、娘を実験台にしてしまう。かくして、円華は謙人と同様な力を手にしたのだった。
だが、謙人はある日、いなくなってしまう。父・才生が、「娘の自殺に家族が巻き込まれた」という"悲劇の主人公"として書いたブログを映画として制作すると知ったためだった。そのため、その映画製作を止めるため、そして父に復讐するため、行動を開始したのだった。
謙人は、才生が映画を撮影するために使った廃墟に、彼をおびき出す。父親に、なぜ家族を殺害しようとしたのか問うと、「完璧から程遠い家族だったから、なくしてしまおうと思った」と身勝手な動機を才生は語った。
才生に拳銃の銃口を向けられた謙人だったが、そこに突如、ダウンバーストが襲った。強烈な気流で、廃墟は崩壊する。瓦礫に押しつぶされ、絶望の中で死亡するという気持ちを思い知らせたかったため、謙人は才生をそこにおびき寄せたのだった。
一緒に死ぬことを考えていた謙人だったが、一命を取り留める。円華は、千佐都を尾行して謙人の居場所を知り、そして起こりうる気象現象を予測して、謙人の狙いが分かったのだった。そのため、気流が逃げるよう計算して、廃墟の一部を破壊しておいたのだった。
才生もまた、一命を取り留める。とどめを刺そうとする謙人を、円華は止める。謙人は「先ほどの告白は録音しておいた。映画製作しようとしたら、世間に明かす」と言いおいて、立ち去る。才生は生きている意味を失い、病室で自殺した。
円華は、今までの生活に戻る。あまり質問しない、無口なボディガード役の武雄徹に、「この世界の未来は、今後、どうなるんですか?」と珍しく訊かれると、円華は、「それは、知らない方がきっと幸せだよ」と言うのだった。
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