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乾くるみ「セカンド・ラブ」あらすじ・ネタバレ

2015.06.02 (Tue)

簡単なあらすじ


1) 里谷正明は、内田春香という資産家の娘で、名門大学の大学院生である女性と出会い、交際することとなった。そのデートの中で、シェリールというスナックに勤務するミナという春香にソックリな女性がいると知る。
2) 興味を抑えきれず、里谷はミナに会いにシェリールに行く。ミナは、本名・半井美奈子と言い、「春香とは、別々の家庭で育てられた一卵性双生児の姉妹」であると告げられる。
3) だが、実際は春香と美奈子は同一人物だった。美奈子は自殺で既に他界しており、以前は2人で入れ替わってそれぞれの生活を楽しんでいた。現在は、春香が1人で春香と美奈子のそれぞれの人格を演じて、品行方正な大学院生と水商売の女性との2重生活を送っていた。だが、その中で里谷の先輩・紀藤和彦に正体を見破られ、なおかつ紀藤と交際し始めたこともあり、春香はスナックを辞めた。
4) 里谷は、美奈子が店を辞めたことを知り、以前、見せられた免許証に書かれた住所をもとに、美奈子の実家である半井家を訪れてしまう。そこで、美奈子は既に自殺していたことを知り、里谷が出会った春香と美奈子が同一人物であること、紀藤と春香が付き合っていることを悟る。
5) 里谷は、春香に「紀藤と俺と、どっちをとるんだ」と迫るが、春香は紀藤を選んだ。そのショックで、里谷は自殺してしまう。里谷は幽霊となり、紀藤と春香の挙式、そして新婚旅行へ旅立つ様子を眺めていた。
6) 本来、見えないはずの幽霊である自分を、春香が認識しているため、「前に幽霊が見えるのは本当だったんだ」と里谷は分かり、心の中で「ごめんね、ずっと嘘だと思ってた」と思うのだった

起:春香との出会い


里谷正明は、ハラモク工業株式会社という木工所の工員であり、休みの日は読書をして過ごすような、女性とは縁遠い生活を過ごしていた。ところが、先輩の紀藤和彦に誘われ、紀藤と紀藤の彼女・尚美、尚美の友達の内田春香の4人でスキーに行く。

スキーの後、里谷は春香から連絡を受け、デートを重ねるようになっていった。春香は不動産を多く持つ資産家の娘で、名門大学の大学院生であった。学歴や家柄がまるっきり異なることに引け目を感じつつも、次第に里谷は春香に惹かれていった。

デートの中で、春香が興奮した中年男性に「騙したな」と抗議を受けた。どうやら、歌舞伎町にあるシェリールというスナックにいるミナという女と間違えたようだった。「そんなソックリな人がいるなら、会ってみたい」と春香は笑って言い、里谷もシェリールという店に興味を持っていた。

承:美奈子との出会い


飲み会の帰り、里谷はシェリールに立ち寄る。そこでミナと出会うが、やはりミナは春香によく似ていた。美奈子は、春香とは一卵性双生児で、姉妹であると告げる。春香にはないホクロがあることや、「半井美奈子」という免許証を見せられたことから、春香と美奈子は別人であると里谷は納得する。

順調に里谷は春香との交際を続ける一方、紀藤が尚美と別れたことを知らされる。里谷は、そんな紀藤を慰めるためか、シェリールに行くことを誘う。ミナがいないことにほっと胸を撫で下ろした里谷だったが、何度かその後も紀藤はシェリールに通っていた。

里谷は、春香の誕生日プレゼントを選ぶため、美奈子と一緒に買物に行く。その帰り、里谷は美奈子の自宅で、彼女と結ばれた。そのことに罪悪感を感じた里谷は、美奈子と今後は会わないと決意する。

転:美奈子を追って


春香との誕生日デートの後、里谷は春香と結ばれる。春香との恋愛を続ける中で、「美奈子に、春香と結ばれたことを伝えるべきではないか」と考え、里谷はシェリールに赴くが、すでに美奈子は店を辞めていた。

「思い出をありがとう」という手紙を残された里谷は、美奈子に会いたいという気持ちを抑えきれず、一度、美奈子に見せられた免許証に書かれていた住所に向かう。だが、そこで美奈子が1年前に自殺していたことを知らされる。

結:春香の答え


紀藤と春香は、成田空港で里谷について話をしていた。里谷が会っていた美奈子と春香は、同一人物であったこと、20歳の時に美奈子から連絡があり、そこから2人はたびたび出会うようになったこと、美奈子は失恋のショックで交通事故を起こし、その顔の怪我を苦にして自殺したこと…そうした2人の話を、里谷は聞いていた。

空港から見える夜景を見ている紀藤と春香。春香の視線の先、窓ガラスの外に里谷は出て見た。だが、窓ガラスは室内にいる人間にとっては鏡になってしまう。そこで、里谷は窓ガラスを通りぬけ、外から内側に戻った。すると、春香はそんな里谷の姿を目で追っていた。

春香は以前、「幽霊のような存在を見ることができる」と言っていた。信じていなかった里谷だったが、自分自身が幽霊となった今、その存在を認識できる春香は、「やっぱり見えているんだ」と悟る。

里谷は、美奈子と春香が同一人物だと知り、さらには春香が紀藤とも関係を持っていたことを知った。そこで、里谷は「紀藤と俺のどちらをとるんだ?」と春香に詰め寄った。自分のことをとると思い込んでいた里谷だったが、春香の答えは、期待していたものとは異なっていた。そのことを苦にして、里谷は自殺してしまっていたのだった。

冒頭の結婚式の様子を里谷は見ていたが、その様子も幽霊となった状態で、新郎の紀藤、新婦の春香の様子を眺めていたのだった。

解説


・内田春香と半井美奈子は、半井家の一卵性双生児として誕生する。だが、その片割れである春香は、春香の両親に引き取られる。春香の父母は、駆け落ち同然で家を出ており、「子供が生まれた」ということで、両親に家へ戻ることを許された。

・20歳になり、美奈子が春香に連絡をとり、お互いが一卵性双生児の姉妹であることを春香は知る。この頃から、2人は入れ替わって自分とは異なる生活を楽しんでいたと思われる。

・ストーリーの中で明示はされていないが、春香の彼氏である西川が春香に振られて自殺したことこそが、美奈子にとっての「失恋」であったのではないかと考えられる(「私とお姉ちゃんって、けっこう男性の好みが似てると思うんです」という春香のセリフあり)。入れ替わりで西川と付き合う中で、美奈子は西川に恋心を抱いていたのではないだろうか。だが、春香が振ってしまったことで、西川と交際を続けることができず、なおかつ西川が失恋を苦に自殺して、そのショックから、交通事故を起こしてしまったのではないかと推察される。

・美奈子は事故後、5回の形成手術を受けるが、顔は元に戻らず、自殺する。美奈子の自殺後も、春香は入れ替わり生活を1人で継続していた。1人2役は、里谷や紀藤らになんら関係のあることではなく、おそらく、退屈な大学院の生活とは異なる刺激的な水商売の世界を楽しんでいただけではないかと考えられる。

・その中で春香は、里谷や紀藤と出会う。2人ともタイプではあったが、紀藤は友人と付き合っており、里谷と交際するようになる。だが、紀藤は彼女と別れたため、なおかつ春香=美奈子という秘密を握られたことから関係を持つようになった。

・里谷は、春香が紀藤と交際している事実を知り、自分と紀藤のどちらをとるのか、と春香に迫った。春香は紀藤を選択し、悲しみのあまり自殺してしまう。

・「正明は窓ガラスの外から内に移動した」といった記載や、「やっぱり『見えて』いるんだ」との記載(春香は、「幽霊のような存在が見える力がある」と言っていた)から、里谷は既に死んでおり、幽霊であることが示される。

・里谷が幽霊となっていることや、紀藤と春香が新婚旅行に旅立とうとしていることから、冒頭の結婚披露宴の様子は、新郎=紀藤、新婦=春香であり、里谷はその挙式の様子をただ眺めていただけであった。

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