湊かなえ「サファイア」あらすじ・ネタバレ
2015.06.06 (Sat)
湊かなえ『サファイア』
・真珠
・ルビー
・ダイヤモンド
・猫目石
・ムーンストーン
・サファイア
・ガーネット
以上、7作品のあらすじ・ネタバレ
平井篤志は、林田万砂子という50歳女性に呼び出され、話を聞くという役目を負っていた。万砂子は、平井に対して、自身の生い立ちについて語りだした。
「母親が厳しくて、お菓子を食べさせてもらえなかった。そのため、株式会社ムーンスターのムーンラビットという歯磨き粉、特にいちご味のもので歯磨きをすることで満足していた」「昔は美人で、モテていた」「職場の同僚・M子が、お香を焚きながら寝て、火災で死亡してしまった。その彼女も、ムーンラビットをよく使用していた」と、万砂子は語った。
万砂子は、小中学校5校の体育館を放火した罪で逮捕された。拘置所の面会室で、平井と万砂子は話をしていた。平井は、ムーンスターのお客様相談室で室長をしており、会社がW&Bに吸収合併された後も、お客様相談室に勤めていた。万砂子は、W&B(旧ムーンスター)に連絡をとり、話をしたいと申し出てきたのだった。そして、白羽の矢が立ったのが平井だった。
ムーンラビットは、既に発売中止となっていた。万砂子は、「ムーンラビットを使い続けたい」と力説していた。平井は、万砂子の話を聞いている中で、「あなたが職場の同僚・M子(万砂子)を殺害し、美人だったにも関わらず、わざとタヌキ顔のM子に整形手術して、成り代わったのではないか」と指摘する。
万砂子(実は倫子という)は、「実家でムーンラビットを使っていたら、母親に捨てられてしまった。実家でも使えない。ムーンラビットを使い続けるには、万砂子になるしかなかった。ブサイクでも構わなかった」というのだった。
「罪を犯した罪悪感などはないのか」と訊く平井に、万砂子は「ムーンラビットが消してくれたわ」と言うのだった。ムーンラビットは、万砂子にとっての精神安定剤だったのだ。それが無くなることに耐え切れなくなり、放火を犯し、人生を棒に振るような行為を行ってしまったのだった。
出版社の編集者である女主人公が実家に帰ると、隣にある老人福祉施設「かがやき」に入所している"おいちゃん"という老人の話を聞く。おいちゃんは、施設から、隣家の庭先にいる母親に「おーい、おーい」と声をかけることから、「おいちゃん」と母親が名づけたのだった。
おいちゃんは、母親を気に入り、高価な和菓子などを差し入れるようになった。お返しに、母親は庭で採れた野菜や、ちらし寿司などをおいちゃんに差し入れたのだった。そんな交流が続いており、その中で、おいちゃんはルビーのブローチを母親にプレゼントするのだった。
主人公は、妹に乞われて、雑誌に掲載予定だった事件について話す。「情熱の薔薇事件」と名づけたその殺人事件は、昭和30年代、鉄将軍と呼ばれる鉄工業で一財産を築いた男が、妻の不倫に激怒し、浮気相手もろとも、日本刀で切りつけたという事件だった。鉄将軍は、妻に1億円以上もするペンダントを贈っており、事件後、そのペンダントの行方がわからなくなっていたというものだ。
老人福祉施設「かがやき」は、刑務所出所者専用の老人福祉施設だった。そのこともあり、主人公は、密かにその鉄将軍こそがおいちゃんなのではないか、と思っていた。だが、高価なペンダントが家にあるといったことが妹に知れたりすると騒動になってしまうため、「斬りつけられた浮気相手の行方も分からなくなっている」と付け加え、さらには"情熱の薔薇事件"などとタイトルを付け、妹には調べられないようにしていた。
だが、妹は施設で働く職員と交際しており、おいちゃんの本名も知っており、おいちゃん=鉄将軍であると知っていた。ペンダントは、やはり1億円以上の値打ちのあるものだったのだ。
父母は、老人福祉施設「かがやき」が、刑務所出所者専用の施設だと知りながら、建設を了承していた。そして、別け隔てなく誰でも親切に接する姿を快く思ったおいちゃんは、気に入ったのだった。そして、高価なペンダントをも贈ったのだった。
古谷治は、お見合いパーティーで知り合った山城美和と交際し、幸せな結婚生活を夢見ていた。婚約指輪となるダイヤモンドの指輪も購入し、美和にプレゼントした。
一緒に食事をしたレストランを出ると、そのレストランの入り口の扉に激突し、気を失った雀を治は発見する。他の客に踏まれるのを身を挺して守り、治は安全な場所に移してやるのだった。
その数日後、雀が女性の姿形となり現れた。「神様に1週間、人間の姿にしてもらえました。治さんに恩返しがしたいです」と雀は告げた。そこで治は、「美和がどんなことを望んでいるか調べて欲しい」と願う。
雀は、「美和さんは、妻子のある男性・鈴木崇史さんと不倫をしており、その鈴木さんと一緒にいたいと望んでいました」と告げる。さらに、治は雀に美和と鈴木が付き合っていることを調査させ、2人の写真を手に入れる。
美和は最初から治と真剣に交際するつもりもなく、栄養士の資格をとるという名目で、授業料と称してカネを騙しとっていた。最終的には、「ストーカーとして警察に被害届を出す」とまで言い切った。その様子を、雀はボイスレコーダーに録音していた。
治は最後に、雀に美和からダイヤモンドの指輪を奪い返して欲しいと依頼する。雀は、依頼されたとおり、指輪を持ち帰っていた。だが、再び雀の姿で扉に激突し、死亡していた。その雀に治は、ダイヤモンドを付けてやり、埋葬してやった。
後日、美和と鈴木がドライブに出たところ、急にタイヤがパンクして事故死したとニュースで治は知る。タイヤには、パンクさせるような細工がしてあったのだという。美和と鈴木の2人でいるところの隠し撮り写真や、ボイスレコーダーのファイルなどから、ストーカーと警察に疑われている治は、雀の話をすべきかどうか悩んでいた。
大槻真由子は、隣人である坂口という女性が、飼い猫・エリを探しているところに遭遇し、一緒に猫を探してやることにした。中学生の娘・果穂、夫・靖史も探すのに協力し、木の上にいたエリを靖史が無事保護し、坂口は感謝するのだった。
後日、坂口は感謝の印として、靖史に妻・真由子の秘密を明かす。「真由子さんはツナ缶をスーパーから万引きをしています」と告げられ、靖史は半信半疑で真由子の後をつける。そして、それが事実だと分かり、愕然とする。
また、果穂には父・靖史が平日の昼間にも関わらず、となり町の図書館にいることを明かす。「リストラされた人で、家族にそのことを言えない人がよくそういうところにいるのよね」と言われ、果穂は図書館に向かう。そこに父は本当におり、さらには男性から金銭を強請っているところを目撃する。そして、その男性とは、果穂がよく知る人物だった。
真由子は、坂口に「果穂さんが中年男性と歓楽街に一緒にいるところを見かけた」と明かす。真由子が調べると、それは事実だった。果穂は、父親が強請っている相手と援助行動をしていたのだった。
さらに、「こんなことしてていいのかい?」と男性に訊かれると、果穂は「ウチの親は犯罪者なんだから、いいの」と告げる。どうして自分の万引きのことを知っているのか、と真由子は驚き戸惑う。
真由子は、エリを再び探す坂口に、わざと車通りの多い場所で「あそこにいるわ」と教えた。周囲が見えていなかった坂口は、クルマに轢かれてしまい、死亡した。
後日、じっと気味悪くエリが、大槻宅を見ている中、真由子は「こそこそ人の後をつけるのが悪いんじゃない。ペラペラ喋るのが悪いのよ」とつぶやくのだった。
1) "わたし"は、市議会議員の妻、そして一児の母として幸せな生活を送っていた。だが、夫が国政選挙に出馬するも落選した後、夫のDVが始まってしまう。
度重なる暴力は、娘にも向かい、子供を救いたい一心で、"わたし"は夫の脚にしがみつき、夫は転倒した拍子に頭を打ち付け、さらに置物で頭部を殴打し、夫は死亡した。
正当防衛とは考えられず、逮捕された"わたし"の元へ、中学時代の女友達がやってくる。その女友達は、敏腕有名弁護士となっていたのだった。そして、「あなたを弁護したい」と申し出てきた。
2) "わたし"は、小学校の頃の教師の心ない言葉で、あがり症となってしまっていた。内気で、教科書の朗読が上手いようにできない"わたし"は、中学時代にいじめに遭っていた。
孤立する"わたし"に、同級生の高坂小百合は優しく接してくれた。そして、"わたし"に読書感想文の朗読コンクールに出るように勧めたのだった。戸惑う"わたし"だったが、小百合は出るべきだと強く主張し、"わたし"は出場を決意する。
小百合は、「本来、聡明で朗読も上手いはず」と自信をつけ、"わたし"の練習につきあい、同級生を巻き込んで盛り上げ、"わたし"は2位入賞を果たす。このことが自信となり、あがり症は少しずつ解消していった。
3) 実は、1) の"わたし"と、2)の"わたし"は異なる。1) でDVを受け、夫を殺害してしまったのが小百合の方で、弁護士として小百合を弁護したいと申し出てきたのが、2)でイジメられていた久美だった。
小百合は、久美の無償での弁護を断ろうとした。だが、久美の説得により、読書感想文で選んだ図書「走れメロス」の一節がまざまざと蘇る。久美は、小百合に「友人を信じ、ともに戦おう」とでも言っているかのようだった。小百合は、久美に弁護を依頼し、久美は頼もしくも優しい微笑みを浮かべるのだった。
紺野真美は、幼い頃から何かをねだるということができず、奢ってもらうといったことも苦手だった。そんな彼女だったが、旅先で出会った中瀬修一により、少しずつ変わっていった。交際が始まり、中瀬は真美のプレゼントを行うようになった。
メイクもしなかった真美だったが、口紅をもらったことがきっかけで、オシャレをするようにもなった。プレゼントをすることの楽しみも理解し、中瀬には、オーダーメイドのカバンをプレゼントした。そして、20歳の誕生日には、「指輪が欲しい」と中瀬に希望を口にした。これは、最初で最後の彼女のおねだりだった。
待ち合わせの場所に、中瀬は現れなかった。電車のホームに転落し、轢かれて死亡してしまったのだという。中瀬の姉に事実を告げられ、そして無事だった真美がプレゼントしたカバンの中から出てきたというサファイアの指輪を渡された。
事故死として処理されたが、なぜホームに転落したのか、真美は疑問に思っていた。そんな時、隣人のタナカが、なぜ彼が死んでかについて、重たい口を開き始めた。実は、タナカと中瀬は、指輪を女性に売りつける悪徳商法のバイトをしていたのだという。
タナカも、売りつけた女性に恨まれ、鉢合わせしたところで文句を言われたのだという。もしかしたら、そうした女性に恨まれ、ホームで背中を押されてしまったのではないか、とタナカは考えたようだ。
タナカの話を聞いた真美は、警察にその情報を伝えようとするが、中瀬の姉に止められる。弟が悪徳商法に関わっていたと思いたくないという理由からだった。
中瀬の死による喪失感と悲しみで、「もう二度と欲しい、なんて口にしない」と真美は誓うのだった。
真美は、中瀬の死を悲しみ、睡眠薬を大量に服用して自殺を図った。隣人であるタナカが救急車を呼び、事なきを得た。だが、中瀬の死に少なからずタナカが関係していることから、真美は「彼を返してくれないなら、私に二度と関わるな!」と怒鳴りつけてしまう。
退院後、真美が家に帰ると、タナカはどこかに行ってしまっていた。その後、真美は食品会社に就職する傍ら、小説を書き、小説家としてデビューする。そのことで社内報に載るなど、目立ってしまったことから、1人の先輩からイジメを受けることになってしまう。
中瀬のプレゼントである大切な指輪を盗られ、抗議して返してもらったものの、その後、階段から突き落とされるなど、復讐心や恨みで張り裂けそうな胸の内を、小説にした。復讐をテーマにした『墓標』が出版されると、ヒットして映画化されることとなった。
主演の麻生雪美との対談で、「悪徳商法で、59万円の指輪を購入させられた。だが、その指輪はデザインも酷く、1万円の値打ちしかなかった」というエピソードを聞かされる。だが、麻生は「こんな指輪が似合わないような存在になってやる」と奮起し、人気女優となっていったのだという。
話の内容から、どうやら中瀬が指輪を売りつけた人物は、麻生だったようだ。だが、麻生は今、その指輪を売りつけた人物を恨んではいないようだった。さらに、彼女が10年以上待ち続けているという男性は、世界中を旅しているタナカであることが判明した。
また、その対談が掲載された雑誌が発売されると、読者の1人から手紙が届いた。その読者もまた、中瀬から指輪を購入したという。だが、その彼女も、売りつけられた指輪に「世界を異なったフィルターで覗ける存在」と捉え、恨んでいないと手紙には書かれており、中瀬の真美への思いもその手紙には書かれていた(指輪を売る商談時、中瀬は彼女がどんな存在かと訊かれ、「彼女の立場や物の見方が好きで、彼女は自分にとってのフィルターだ」と語っていた)。
その晩、真美は中瀬の夢を見た。中瀬は、真美の頭を撫でると消えていった。もう彼のことを夢見ることはないが、新しい本をカバンの中に入れておけば、読んでくれるのではないか、と真美は思っていた。
【関連記事】
湊かなえ「リバース」あらすじ・ネタバレ
ネタバレ作品一覧
トップページへ「1分で分かるネタバレ」
・真珠
・ルビー
・ダイヤモンド
・猫目石
・ムーンストーン
・サファイア
・ガーネット
以上、7作品のあらすじ・ネタバレ
真珠
平井篤志は、林田万砂子という50歳女性に呼び出され、話を聞くという役目を負っていた。万砂子は、平井に対して、自身の生い立ちについて語りだした。
「母親が厳しくて、お菓子を食べさせてもらえなかった。そのため、株式会社ムーンスターのムーンラビットという歯磨き粉、特にいちご味のもので歯磨きをすることで満足していた」「昔は美人で、モテていた」「職場の同僚・M子が、お香を焚きながら寝て、火災で死亡してしまった。その彼女も、ムーンラビットをよく使用していた」と、万砂子は語った。
万砂子は、小中学校5校の体育館を放火した罪で逮捕された。拘置所の面会室で、平井と万砂子は話をしていた。平井は、ムーンスターのお客様相談室で室長をしており、会社がW&Bに吸収合併された後も、お客様相談室に勤めていた。万砂子は、W&B(旧ムーンスター)に連絡をとり、話をしたいと申し出てきたのだった。そして、白羽の矢が立ったのが平井だった。
ムーンラビットは、既に発売中止となっていた。万砂子は、「ムーンラビットを使い続けたい」と力説していた。平井は、万砂子の話を聞いている中で、「あなたが職場の同僚・M子(万砂子)を殺害し、美人だったにも関わらず、わざとタヌキ顔のM子に整形手術して、成り代わったのではないか」と指摘する。
万砂子(実は倫子という)は、「実家でムーンラビットを使っていたら、母親に捨てられてしまった。実家でも使えない。ムーンラビットを使い続けるには、万砂子になるしかなかった。ブサイクでも構わなかった」というのだった。
「罪を犯した罪悪感などはないのか」と訊く平井に、万砂子は「ムーンラビットが消してくれたわ」と言うのだった。ムーンラビットは、万砂子にとっての精神安定剤だったのだ。それが無くなることに耐え切れなくなり、放火を犯し、人生を棒に振るような行為を行ってしまったのだった。
ルビー
出版社の編集者である女主人公が実家に帰ると、隣にある老人福祉施設「かがやき」に入所している"おいちゃん"という老人の話を聞く。おいちゃんは、施設から、隣家の庭先にいる母親に「おーい、おーい」と声をかけることから、「おいちゃん」と母親が名づけたのだった。
おいちゃんは、母親を気に入り、高価な和菓子などを差し入れるようになった。お返しに、母親は庭で採れた野菜や、ちらし寿司などをおいちゃんに差し入れたのだった。そんな交流が続いており、その中で、おいちゃんはルビーのブローチを母親にプレゼントするのだった。
主人公は、妹に乞われて、雑誌に掲載予定だった事件について話す。「情熱の薔薇事件」と名づけたその殺人事件は、昭和30年代、鉄将軍と呼ばれる鉄工業で一財産を築いた男が、妻の不倫に激怒し、浮気相手もろとも、日本刀で切りつけたという事件だった。鉄将軍は、妻に1億円以上もするペンダントを贈っており、事件後、そのペンダントの行方がわからなくなっていたというものだ。
老人福祉施設「かがやき」は、刑務所出所者専用の老人福祉施設だった。そのこともあり、主人公は、密かにその鉄将軍こそがおいちゃんなのではないか、と思っていた。だが、高価なペンダントが家にあるといったことが妹に知れたりすると騒動になってしまうため、「斬りつけられた浮気相手の行方も分からなくなっている」と付け加え、さらには"情熱の薔薇事件"などとタイトルを付け、妹には調べられないようにしていた。
だが、妹は施設で働く職員と交際しており、おいちゃんの本名も知っており、おいちゃん=鉄将軍であると知っていた。ペンダントは、やはり1億円以上の値打ちのあるものだったのだ。
父母は、老人福祉施設「かがやき」が、刑務所出所者専用の施設だと知りながら、建設を了承していた。そして、別け隔てなく誰でも親切に接する姿を快く思ったおいちゃんは、気に入ったのだった。そして、高価なペンダントをも贈ったのだった。
ダイヤモンド
古谷治は、お見合いパーティーで知り合った山城美和と交際し、幸せな結婚生活を夢見ていた。婚約指輪となるダイヤモンドの指輪も購入し、美和にプレゼントした。
一緒に食事をしたレストランを出ると、そのレストランの入り口の扉に激突し、気を失った雀を治は発見する。他の客に踏まれるのを身を挺して守り、治は安全な場所に移してやるのだった。
その数日後、雀が女性の姿形となり現れた。「神様に1週間、人間の姿にしてもらえました。治さんに恩返しがしたいです」と雀は告げた。そこで治は、「美和がどんなことを望んでいるか調べて欲しい」と願う。
雀は、「美和さんは、妻子のある男性・鈴木崇史さんと不倫をしており、その鈴木さんと一緒にいたいと望んでいました」と告げる。さらに、治は雀に美和と鈴木が付き合っていることを調査させ、2人の写真を手に入れる。
美和は最初から治と真剣に交際するつもりもなく、栄養士の資格をとるという名目で、授業料と称してカネを騙しとっていた。最終的には、「ストーカーとして警察に被害届を出す」とまで言い切った。その様子を、雀はボイスレコーダーに録音していた。
治は最後に、雀に美和からダイヤモンドの指輪を奪い返して欲しいと依頼する。雀は、依頼されたとおり、指輪を持ち帰っていた。だが、再び雀の姿で扉に激突し、死亡していた。その雀に治は、ダイヤモンドを付けてやり、埋葬してやった。
後日、美和と鈴木がドライブに出たところ、急にタイヤがパンクして事故死したとニュースで治は知る。タイヤには、パンクさせるような細工がしてあったのだという。美和と鈴木の2人でいるところの隠し撮り写真や、ボイスレコーダーのファイルなどから、ストーカーと警察に疑われている治は、雀の話をすべきかどうか悩んでいた。
猫目石
大槻真由子は、隣人である坂口という女性が、飼い猫・エリを探しているところに遭遇し、一緒に猫を探してやることにした。中学生の娘・果穂、夫・靖史も探すのに協力し、木の上にいたエリを靖史が無事保護し、坂口は感謝するのだった。
後日、坂口は感謝の印として、靖史に妻・真由子の秘密を明かす。「真由子さんはツナ缶をスーパーから万引きをしています」と告げられ、靖史は半信半疑で真由子の後をつける。そして、それが事実だと分かり、愕然とする。
また、果穂には父・靖史が平日の昼間にも関わらず、となり町の図書館にいることを明かす。「リストラされた人で、家族にそのことを言えない人がよくそういうところにいるのよね」と言われ、果穂は図書館に向かう。そこに父は本当におり、さらには男性から金銭を強請っているところを目撃する。そして、その男性とは、果穂がよく知る人物だった。
真由子は、坂口に「果穂さんが中年男性と歓楽街に一緒にいるところを見かけた」と明かす。真由子が調べると、それは事実だった。果穂は、父親が強請っている相手と援助行動をしていたのだった。
さらに、「こんなことしてていいのかい?」と男性に訊かれると、果穂は「ウチの親は犯罪者なんだから、いいの」と告げる。どうして自分の万引きのことを知っているのか、と真由子は驚き戸惑う。
真由子は、エリを再び探す坂口に、わざと車通りの多い場所で「あそこにいるわ」と教えた。周囲が見えていなかった坂口は、クルマに轢かれてしまい、死亡した。
後日、じっと気味悪くエリが、大槻宅を見ている中、真由子は「こそこそ人の後をつけるのが悪いんじゃない。ペラペラ喋るのが悪いのよ」とつぶやくのだった。
ムーンストーン
1) "わたし"は、市議会議員の妻、そして一児の母として幸せな生活を送っていた。だが、夫が国政選挙に出馬するも落選した後、夫のDVが始まってしまう。
度重なる暴力は、娘にも向かい、子供を救いたい一心で、"わたし"は夫の脚にしがみつき、夫は転倒した拍子に頭を打ち付け、さらに置物で頭部を殴打し、夫は死亡した。
正当防衛とは考えられず、逮捕された"わたし"の元へ、中学時代の女友達がやってくる。その女友達は、敏腕有名弁護士となっていたのだった。そして、「あなたを弁護したい」と申し出てきた。
2) "わたし"は、小学校の頃の教師の心ない言葉で、あがり症となってしまっていた。内気で、教科書の朗読が上手いようにできない"わたし"は、中学時代にいじめに遭っていた。
孤立する"わたし"に、同級生の高坂小百合は優しく接してくれた。そして、"わたし"に読書感想文の朗読コンクールに出るように勧めたのだった。戸惑う"わたし"だったが、小百合は出るべきだと強く主張し、"わたし"は出場を決意する。
小百合は、「本来、聡明で朗読も上手いはず」と自信をつけ、"わたし"の練習につきあい、同級生を巻き込んで盛り上げ、"わたし"は2位入賞を果たす。このことが自信となり、あがり症は少しずつ解消していった。
3) 実は、1) の"わたし"と、2)の"わたし"は異なる。1) でDVを受け、夫を殺害してしまったのが小百合の方で、弁護士として小百合を弁護したいと申し出てきたのが、2)でイジメられていた久美だった。
小百合は、久美の無償での弁護を断ろうとした。だが、久美の説得により、読書感想文で選んだ図書「走れメロス」の一節がまざまざと蘇る。久美は、小百合に「友人を信じ、ともに戦おう」とでも言っているかのようだった。小百合は、久美に弁護を依頼し、久美は頼もしくも優しい微笑みを浮かべるのだった。
サファイア
紺野真美は、幼い頃から何かをねだるということができず、奢ってもらうといったことも苦手だった。そんな彼女だったが、旅先で出会った中瀬修一により、少しずつ変わっていった。交際が始まり、中瀬は真美のプレゼントを行うようになった。
メイクもしなかった真美だったが、口紅をもらったことがきっかけで、オシャレをするようにもなった。プレゼントをすることの楽しみも理解し、中瀬には、オーダーメイドのカバンをプレゼントした。そして、20歳の誕生日には、「指輪が欲しい」と中瀬に希望を口にした。これは、最初で最後の彼女のおねだりだった。
待ち合わせの場所に、中瀬は現れなかった。電車のホームに転落し、轢かれて死亡してしまったのだという。中瀬の姉に事実を告げられ、そして無事だった真美がプレゼントしたカバンの中から出てきたというサファイアの指輪を渡された。
事故死として処理されたが、なぜホームに転落したのか、真美は疑問に思っていた。そんな時、隣人のタナカが、なぜ彼が死んでかについて、重たい口を開き始めた。実は、タナカと中瀬は、指輪を女性に売りつける悪徳商法のバイトをしていたのだという。
タナカも、売りつけた女性に恨まれ、鉢合わせしたところで文句を言われたのだという。もしかしたら、そうした女性に恨まれ、ホームで背中を押されてしまったのではないか、とタナカは考えたようだ。
タナカの話を聞いた真美は、警察にその情報を伝えようとするが、中瀬の姉に止められる。弟が悪徳商法に関わっていたと思いたくないという理由からだった。
中瀬の死による喪失感と悲しみで、「もう二度と欲しい、なんて口にしない」と真美は誓うのだった。
ガーネット
真美は、中瀬の死を悲しみ、睡眠薬を大量に服用して自殺を図った。隣人であるタナカが救急車を呼び、事なきを得た。だが、中瀬の死に少なからずタナカが関係していることから、真美は「彼を返してくれないなら、私に二度と関わるな!」と怒鳴りつけてしまう。
退院後、真美が家に帰ると、タナカはどこかに行ってしまっていた。その後、真美は食品会社に就職する傍ら、小説を書き、小説家としてデビューする。そのことで社内報に載るなど、目立ってしまったことから、1人の先輩からイジメを受けることになってしまう。
中瀬のプレゼントである大切な指輪を盗られ、抗議して返してもらったものの、その後、階段から突き落とされるなど、復讐心や恨みで張り裂けそうな胸の内を、小説にした。復讐をテーマにした『墓標』が出版されると、ヒットして映画化されることとなった。
主演の麻生雪美との対談で、「悪徳商法で、59万円の指輪を購入させられた。だが、その指輪はデザインも酷く、1万円の値打ちしかなかった」というエピソードを聞かされる。だが、麻生は「こんな指輪が似合わないような存在になってやる」と奮起し、人気女優となっていったのだという。
話の内容から、どうやら中瀬が指輪を売りつけた人物は、麻生だったようだ。だが、麻生は今、その指輪を売りつけた人物を恨んではいないようだった。さらに、彼女が10年以上待ち続けているという男性は、世界中を旅しているタナカであることが判明した。
また、その対談が掲載された雑誌が発売されると、読者の1人から手紙が届いた。その読者もまた、中瀬から指輪を購入したという。だが、その彼女も、売りつけられた指輪に「世界を異なったフィルターで覗ける存在」と捉え、恨んでいないと手紙には書かれており、中瀬の真美への思いもその手紙には書かれていた(指輪を売る商談時、中瀬は彼女がどんな存在かと訊かれ、「彼女の立場や物の見方が好きで、彼女は自分にとってのフィルターだ」と語っていた)。
その晩、真美は中瀬の夢を見た。中瀬は、真美の頭を撫でると消えていった。もう彼のことを夢見ることはないが、新しい本をカバンの中に入れておけば、読んでくれるのではないか、と真美は思っていた。
【関連記事】
湊かなえ「リバース」あらすじ・ネタバレ
ネタバレ作品一覧
トップページへ「1分で分かるネタバレ」
| トップページへ |