米澤穂信「満願-夜警」あらすじ・ネタバレ
2015.06.06 (Sat)
簡単なあらすじ
1) 川藤浩志巡査は、自宅で妻に対し、刃物を持ちだして暴れる田原勝を止めようとして、殉職した。5発発砲し、4発命中、1発の銃弾は庭で発見された。
2) 上司である柳岡巡査部長は、川藤が警ら中に銃弾を落としてしまい、トラックに踏まれて暴発したのをごまかすため、わざと田原に暴れさせ、撃ったのではないかと考えた。川藤は、「奥さんは浮気している」と、電話で田原に吹き込んだのだった。
3) だが、田原のしぶとさという誤算により、川藤は刺され、死亡してしまった。柳岡は、交番の前にある街路樹に、何かを引き抜いたような痕や、取り出そうとしたナイフによる切り傷を発見した。
起:殉職
川藤浩志巡査は、自宅で妻に対し、刃物を持ちだして暴れる田原勝を止めようとして、殉職した。田原に対して5発発砲し、相手を死に至らしめると同時に、斬りつけられたことが原因で川藤巡査は病院に搬送後、死亡した。
勇敢な警察官が、命と引き換えに凶悪犯を制圧したという世間の見方もあるが、上司である柳岡巡査部長は、「所詮は警察官に向かない男だった」と冷ややかに独り言を呟いた。
警察学校を卒業後、川藤は緑1交番に配属された。川藤は、酔っぱらいのケンカの仲裁にも関わらず、拳銃に手をのばそうとするといった様子があり、その血気に逸る行動について、柳岡は注意を向けていた。また、自転車の書類箱の鍵をかけ忘れたのを、「警らに行きます」と行ってかけ直そうとするなど、小細工でごまかそうとする様子についても、問題視していた。
だが、柳岡は川藤に厳しく接するといったことはなかった。以前、三木という部下に厳しく指導し、自殺されてしまったことがあったため、そのような指導は行わずにいたのだった。
承:柳岡の回想
柳岡は、川藤の兄の家を訪れ、線香をあげた。そこで、兄は「アイツは、親父に似て肝っ玉が小さい。銃が好きで、銃を撃つために警官になったような様子だった」と知らされる。そして、兄に「弟が死んだ日のことを教えてください」と乞われ、柳岡は語りだした。
柳岡は、川藤が亡くなった日のことを回想していた。田原の妻が交番へやってきて、いつものように愚痴をこぼしつつ、旦那の嫉妬が酷く、そのうち殺されてしまうのではないか、と相談にやってきていた。柳岡たちは、「パトロールを強化します」と言って帰した。
また、工事現場で誘導員が頭を押さえて倒れたという一件があった。小石などをトラックが跳ね上げ、それがヘルメットに当たったのではないか、と川藤は柳岡に説明した。
零時に近くなった頃、交番へ田原が暴れていると連絡があった。川藤と柳岡は、現場へ向かった。柳岡の説得で、一度は大人しくなった田原だったが、川藤の「諦めろ、緑1交番だ!」との言葉に激昂し、田原は襲いかかってきた。
川藤は、田原に向けて早撃ちを行ったが、田原は止まらずにナイフを刺してきた。救急車を待たずして、川藤と田原は死亡したのだった。首から血を吹き出しながら、川藤は「こんなはずじゃなかった…上手くいったのに」とつぶやいていた。
転:川藤の企て
川藤は、5発撃った後、4発が田原に命中していた。1発は、庭に落ちていた。柳岡は話しつつ考え、一つの結論に至った。川藤は、5発撃ったのではなく、1発を庭に置いたのではないか、と柳岡は考えた。
川藤は、銃弾を1つ、警ら中に紛失していた。そして、その銃弾をトラックが踏み、暴発。銃弾は工事現場の誘導員のヘルメットにかすめたのだった。幸運にも弾丸を見つけることはできたが、そのまま銃弾を返却するわけにはいかない。暴発を隠すためには、発砲する必要がある、と川藤は考えたのだった。
そこで、川藤は田原へ「奥さんは浮気している。相手は緑1交番の警官だ」と電話して知らせたのだった。案の定、田原は妻へ襲いかかり、通報された。川藤は1発を庭においたとともに、5発の銃弾を撃ったように見せかけた。ところが、唯一の誤算は、田原に斬りつけられてしまったことだ。
結:証拠
柳岡は、交番の向かいにある街路樹に、刃物で傷つけられた痕を見つけるとともに、刺さった何かを引き抜いた痕を見つけた。柳岡は、自分も警察官に向かないと考え、いずれ警察を去るだろう、と考えていた。
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