米澤穂信「満願-柘榴」あらすじ・ネタバレ
2015.06.06 (Sat)
簡単なあらすじ
1) 皆川さおりは、誰もが羨む美貌の持ち主であり、佐原成海と結婚する。成海は、外見が特段良いわけでもなかったが、人気があり、その彼と結婚することで、「佐原成海は、私のトロフィーなのだ」とさおりは考えていた。
2) ところが、成海は定職にもつかず、2人の娘の育児もしなかった。家を空けることも多く、ついにさおりは離婚を決意する。
3) ところが、離婚に際し、成海は親権を主張した。離婚調停になり、さおりは勝つと疑いもしなかったが、娘の月子が「虐待されています」と虚偽の報告をし、親権は成海のものとなった。
4) 父親のことを心配する娘たちの気持ちを分かってやれなかったと思うさおりだったが、実は月子は父親と関係を持ち、さおりがかつて思っていたように、母から父親を奪うことで「佐原成海は、私のトロフィーなのだ」と思っていた。
起:さおりの決意
皆川さおりは、誰もが羨む美貌の持ち主であり、佐原成海と結婚する。成海は、顔が整っていたわけでも、ファッションセンスがあったわけでもなかったが、同じゼミ生の間で人気があったのだ。「佐原成海は、私のトロフィーなのだ」とさおりは考えていた。
2人の娘にも恵まれ、夕子、月子とそれぞれ名付けられた。さおりは娘を愛し、自ら働いて彼女たちを育てた。成海は、定職にもつかず、家に帰りもしないような男だったのだ。娘たちの成長を見ながら、さおりは離婚を決意する。
承:調停
成海もまた、離婚に同意した。ところが、成海は親権を主張した。もちろん、さおりは娘を手放すつもりはなく、さらにはほとんど家にも居ず、子供たちの面倒をみることのない成海の親権が認められるわけがないと考えていた。
裁判所で調停が行われることになった。もちろん、さおりが勝つことは明白だった。そんな中、夕子は離婚調停に呼ばれ、聴取を受けることになっていた。
転:月子の証言
月子は、妹とともに話し合い、ある決意を固めていた。そして、学校の空き教室で妹に真鍮製の靴べらで自らの身体を叩かせた。そして、同様に自身も、妹の身体に叩いた。
調停の決着が付く日、さおりは自身に親権があるものとされると疑いもしなかった。生活能力もなく、子供の養育に問題がある成海のところに親権が移される可能性はないと思っていたのだった。
ところが、成海に親権があるものとする、という審判官の言葉に愕然とした。その理由として、「お子さんたちが、虐待を受けていると言っている」と聞かされたのだった。調停に出席した月子は、夕子とともにそう証言したのだ。
さらに、さおりには精神科受診歴があり、「お酒を飲んだり、薬を飲んで朦朧としているときに暴力を振るわれた」と月子は言ったのだった。そして、妹ともに叩き合った痕を、証拠として見せたのだった。
結:月子の真意
さおりは、子供たちが自作自演で虐待されていると見せかけたのだと分かっていた。靴べらも、長らく使用しておらず、ホコリをかぶっていたのだった。
「私は、子供たちの気持ちを考えていなかった。『お母さんは大丈夫だけど、お父さんは1人で生きていけるのかな…』と思ったのではないか」と考え、さおりは離婚したことが間違っていたのではないかと思っていた。
だが、そんなさおりの考えすらも、誤りだった。月子は、母・さおりの手から、父・成海を奪いたいと考えていたのだ。月子は、成海と肉体関係を持っていた。月子もまた、母のように「佐原成海は、私のトロフィーなのだ」と思っていた。
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