東野圭吾「禁断の魔術」あらすじ・ネタバレ
2015.06.10 (Wed)
簡単なあらすじ
1) 政治担当の新聞記者・古芝秋穂は、代議士・大賀仁策との不倫の末、子宮外妊娠・卵巣破裂による大量出血で死亡した。大賀は秋穂とホテルの一室で会っていたのだが、様子のおかしい秋穂を放置して立ち去ったのだった。
2) 秋穂の弟・伸吾は、大賀代議士に、湯川から作成方法を学んだレールガンで、復讐を遂げようとしていた。年は離れているものの、同じ高校の先輩・後輩、そして"教え子"の復讐を、湯川は止めようとする。
3) 伸吾の進化させたレールガンを、湯川は制御権を乗っ取る。そして、伸吾に復讐の意志があるのなら、代わりに撃つと言い、一方で、伸吾の父の「地雷制作に携わったことを後悔し、正しいことをしようと、再び研究者として別の道を歩み出した」というエピソードを伝え、伸吾に復讐をやめさせたのだった。
起:古芝秋穂の死
政治担当の新聞記者・古芝秋穂は、ホテルのスイートルームで死亡した。ベッド上で、下半身から大量の血液を流した状態であり、子宮外妊娠による卵管破裂を起こしており、死因は大量出血によるショック死だった。
秋穂の弟・伸吾は、姉がホテルのスイートルームで死亡していた点や、メールに「1208です」と、部屋番号だけの送信履歴が残されていたこと、部屋には2人分のビールグラスが用意されていたことなどから、部屋に誰か別に男がいたのではないかと考える。
相手は、メールで姉が「先生」と呼ぶ人物であり、なおかつ光原町という町名が出てきていたことから、伸吾は代議士・大賀仁策が姉の死亡現場におり、なおかつ苦しむ姉を見殺しにして部屋から逃げたのではないか、と考えた。
伸吾は、姉のケータイに残された電話番号に電話を掛け、その相手が大賀であることを確認した。その会話の内容を録音し、姉を見殺しにした大賀への復讐をしようと決意したのだった。
承:伸吾の決意
帝都大学理学部教授・湯川学は、伸吾と同じ統和高校の出身であった。伸吾は、物理学研究部の部員であったが、新入生が入ってこなかったことから、新入生募集を行うデモンストレーションを行いたいと考えていた。そこで、先輩である湯川にインパクトのある実験を行うための協力を仰いでいたのだった。
その実験とは、「レールガン」という、物体を電磁誘導(ローレンツ力)により加速して撃ち出す装置であり、そのデモンストレーションは見事成功した。この出会いや、亡き父の「科学を制するものは、世界を制する」という話もあり、伸吾もまた、帝都大学理学部に入部を果たす。だが、姉の死により全ては一変した。
大学進学にあたり、奨学金を受けられたが、それは姉が大賀に依頼した口利きで受けられていたのだと分かり、伸吾は大学を辞める。そして、湯川に学んだレールガンを発展・進化させ、大賀の命を奪おうと考えるのだった。
転:大賀代議士のスキャンダル
大賀は小さな町工場に勤務し、そこで技術を学んだ。そして、その工場で密かにレールガンの研究を重ねていった。ところが、その様子を倉坂由理奈に見られてしまう。由理奈は、伸吾に好意を持っており、黙っている代わりに、レールガンの研究に深夜まで付き合うことになった。
室外で、遠くのターゲットを撃つ研究をしていたが、その中で、狙いがそれてしまい、屋形船に当たってしまうこともあった。そんな中、伸吾たちの様子に疑問を持ったフリーライター・中岡修が由理奈に近づいた。
中岡は、由理奈から伸吾の姉の一件を聞き、大賀代議士の秋穂を見殺しにしたというスキャンダルを握る。そして中岡は、大賀代議士が推進するスーパー・テクノポリス計画に反対する勝田に、そのことを伝えた。記事にして公表する、という中岡に、勝田は「少し待って欲しい」と伝える。
実は、勝田はスーパー・テクノポリス計画の推進派のスパイだった。すぐさま公表されてしまっては困る。だが、そのことについても中岡は知っていた。そこで、中岡は「向こうの同行を知るためのダブルスパイになって欲しい」と勝田に告げる。
勝田は、中岡の口を封じるために殺害する。そして、由理奈との会話を録音したボイスレコーダーも持ち去ったのだった。当初、伸吾が殺害したのではないかと疑われていたが、勝田は犯行を自供した。
結:湯川の決意
伸吾は、地鎮祭に参加する大賀代議士をレールガンで狙うものと考えられていた。内海 薫刑事、草薙俊平刑事、湯川らは、地鎮祭の行われる周囲を捜索し、伸吾のクルマを発見。その中に、レールガンを発見した。「これだ、レールガン。高校時代のままだ」と湯川は言う。
地鎮祭は無事に終わり、凶器となるレールガンの発見に、事件は解決したと草薙刑事は考える。帰ろうとする湯川の姿に、「何か隠している」と感づいた内海刑事は、湯川の後をつける。湯川は、ショッピングモールに1人で向かった。
大賀代議士は、近くの野球場で、投手として登板していた。湯川の向かったショッピングモールは、野球場から1 Km離れた場所にあった。そこに伸吾はいて、大賀をレールガンで狙っていた。近くのクルマから遠隔操作し、ターゲットに狙いを定めていたが、急に動作しなくなった。慌ててレールガン本体を見に行くと、そこには携帯電話が置かれており、湯川からの着信があった。
「レールガンの制御権はこちらにある」と湯川は告げる。そして、「君にレールガンを作らせたのは私だ。私が決着をつける」と、伸吾に殺意があるのならば、代行すると言うのだった。
湯川は、伸吾の尊敬する父の仕事について語る。伸吾の父親は、アメリカの軍需産業の企業で働いていたが、地雷制作に携わってしまったことを悔いて、日本で過ちを正す研究をするようになった、と明かす。
「科学を制するものが、世界を制する」という父の言葉の意味が、科学を悪しき行為に使うのではなく、正しく使うべきものだと、深く伸吾の胸に刺さった。そして、伸吾は大賀代議士への復讐を諦めたのだった。勝田は中岡殺害で逮捕され、伸吾は器物損壊罪で起訴され、殺人予備罪での起訴は見送られた。
草薙は、湯川に撃つ気はないと思っていたが、内海は「先生の目は本気でした。もし代議士を殺していたら、潔く刑に服するつもりでいたに違いない」と考えていた。
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