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村上龍「オールド・テロリスト」あらすじ・ネタバレ

2015.06.27 (Sat)

簡単なあらすじ


1) フリーライターのセキグチは、「NHKでテロが起こる」とのタレコミをもとに、取材に出かける。実際に、そこではNHKで火災が起こり、12人の犠牲者が出た。
2) さらには、刈払機で通行人を襲う事件や、歌舞伎町の映画館で起こった毒ガス噴霧事件などが起こり、多くの犠牲者が次々に出た。
3) 事件を計画していたのは、後期高齢者たちだった。若者にテロ実行を指示していた首謀者・ミツイシは、セキグチに「私達は、今の腑抜けた日本を大戦直後のような焼け野原にしたいと考えている」「88ミリ対戦車砲を使用し、原発を狙う」と明かされる。そして、「我々のやろうとしているを記事にしてもらいたい」と依頼する。
4) アメリカ軍との戦闘になり、ドローンにより殲滅させられそうになっているミツイシから、改めて記事を書くことを依頼されたセキグチは、書くことを決意する。そして、「まだ88ミリ対戦車砲は2基ある」と、テロが続くことを予期していた。

起:阿鼻叫喚のNHK


フリーライターのセキグチは、週刊誌の廃刊に伴い、職を失った。荒んだ生活を送り、妻子にも逃げられ、ホームレス寸前の状態だった。そんなある日、昔勤めた出版社のウェブマガジンに記事を書いて欲しい、と依頼を受ける。

「NHKでテロを起こす」というヨシザキと名乗る老人からの電話があったのだという。ヨシザキは、セキグチを名指しして、ルポを書いてもらいたいと語ったということもあり、セキグチに白羽の矢が立ち、今回の依頼が舞い込んだのだった。

NHKに向かうと、若い男性が挙動不審な行動を起こしていることに気づいた。続いて、その男が異臭のする液体を撒き、火を放った。爆発が起こり、現場は阿鼻叫喚の状況となった。計12人が死亡することとなり、後に、やはり若者の共犯者たちが自殺し、その遺書で「放送内容が原因で、その真似をして高齢者が死亡したことが問題である」と、今回のテロを起こした理由であると公表された。

承:カツラギとの出会い


セキグチは、NHKでの一件をウェブマガジンで記事にした。その後も、PTSDに悩まされつつも、精神安定剤を飲みながらこの事件について調査を行っていた。共犯者たちの1人が、隷書体という珍しい書体で遺書を書いていたことに着目し、その共犯者が通っていた書道教室に向かう。

そこは、老人たちが集う寄り合い所のようなところで、その中に書道教室もあった。生徒と思しき20代女性のカツラギに出会う。彼女の証言で、やはり自殺した共犯者も、書道教室に通っていたことが判明した。

その教室の帰り、預けていたジャケットのポケットに、次の犯行を予告する紙切れが入っていたことを発見する。マイクロフィルムも添付されており、その画像から、次回のテロが起こる場所と日時が記載されていた。

指定された日時に、大田区池上柳橋商店街へと向かうと、そこで、刈払機で3人の男女を襲う事件が発生した。犯人であるタキザワは、警察に取り囲まれ、自らの声明を読み上げた後、刈払機を自身の首に向けて自殺した。

転:想定外の事態


タキザワの通院していた心療内科は、カツラギも知っているクリニックだった。カツラギの紹介で、そのクリニックに向かうと、アカヅキという医師が、キニシスギオなどと名乗る老人たちの集団がテロを画策していること仄めかされる。

さらに、アカヅキは歌舞伎町の映画館でテロが起こることを示唆し、セキグチとカツラギたちはそこへ向かう。そこでは、3人の犯人によりイペリットというびらん性の毒ガスが撒かれ、さらには火災も引き起こされ、867名も死者が出た。

この事件があまりにも凄惨で多くの犠牲者が出たこともあり、その予想外の事態に、アカヅキは責任を感じて自殺してしまう。

セキグチは、カツラギの祖父の友人であるという"コンドウ"に出会う。彼はフィクサーとして暗躍し、多くの権力を持っている人物だった。すでに100歳を迎え、喋ることもままならない状態だったが、今回のテロ計画の発起人であるという。

だが、"コンドウ"は、想定していた計画とは変わってきているのだと明かした。同じ目的に賛同する人々が計画に加わったが、その方向性が変わってきており、より過激な状態で歌舞伎町のテロが起こってしまったのだという。その調査をして欲しい、と"コンドウ"はセキグチに伝え、現在、計画の実質的な主権を担っているのは、ミツイシと明かされた。

結:ミツイシの覚悟


"コンドウ"が心不全で死亡した弔問に訪れたセキグチは、そこでミツイシに出会う。ミツイシは年商数百億の起業家であり、政界にも影響をおよぼす人物だった。

ミツイシは、「腑抜けた日本を、大戦直後のような焼け野原にし、一から再生する必要がある」と主張した。そのため、満州から引き上げる際に持ち込んだという88ミリ対戦車砲を使用し、原発を狙うという。

先のテロについては、「我々は本気である」と自身たちで再確認するために必要であったのだとミツイシは語った。実行犯である若者たちは、死にたがっており、大義を与えてやったに過ぎず、洗脳や無理強いはしていないという。

セキグチは、ミツイシに「我々の行おうとしている真実を記事にしてもらいたい」と依頼される。そのために接触を図ったのだと、ミツイシは明かした。だが、実際に88ミリ対戦車砲が原発施設に向けて砲撃している目撃し、セキグチは記事を書くのを躊躇う。外資系金融機関に勤める元妻に相談すると、「その記事が掲載され、事実が明らかにされると、原発を爆破せずとも、円は暴落し、"焼け野原"になる」と指摘された。

セキグチは、内閣府副大臣に相談し、「ミツイシたちをおびき出して欲しい。そこでアメリカ軍兵士による攻撃で殲滅する」という計画を提案される。セキグチに拒否権はなく、かといってミツイシたちを誘い出すことはできないと逡巡していると、ミツイシの方から「記事のために集合写真をとりたい」と、同行を求められる。

ミツイシらは、米兵と戦闘になり、88ミリ対戦車砲でヘリを撃ち落とすが、その後のドローンによる攻撃で大打撃を受ける。さらには、身を隠した施設内にガソリンを注ぎ込まれ、もはや逃れることはできなかった。ミツイシは、「命を懸けてお願いします。あなたに記事を書いてもらいたい」とセキグチに懇願する。

米兵に救出されたセキグチは、記事を書くと誓う。そして、「まだ88ミリ対戦車砲は2基残っている」と、これからも仲間たちによるテロが続くのではないか、と考えていた。


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