ドラマ「JIN-仁-」と原作の違い
2009.11.23 (Mon)
『JIN-仁-』は、村上もとかによるマンガ(スーパージャンプ掲載)である。その原作を元にして、現在ドラマが放映されている。しかしながら、その原作とドラマは、大筋のストーリー展開では同じであるが、大きな設定の違いがある。それについて、以下のように考察してみた。
かなりのネタバレ(原作未読の方)があるので、ご注意を。
ドラマでは、現代に友永未来という人物が存在する。しかしながら、原作では登場していない(花魁である野風は登場する)。
ドラマにて、友永未来は、南方仁(大沢たかお)の婚約者であり医師である(仁の後輩にあたる)。脳幹部に発生した腫瘍を、周囲の反対を押し切って自ら手術により除去しようと試みるが、結局は友永未来を植物状態にしてしまう。そのトラウマから、難易度の高い脳外科手術を避けるようになった、という設定が新たに設けられている。
一方で、原作では友永未来は登場していない。ただ、恋人はいたという設定になっている。しかしながら、婚約を申し込もうとしたが断られ、その際に恋人から返された指輪を過去(幕末)に持ってきており、それを橘咲(ドラマでは綾瀬はるか)に渡してプロポーズする、というシーンがある。
また、ドラマでは橘咲が麻疹にかかり、仁に命を救われたのを機に、医学の道に傾倒していく、というストーリーは割愛されている。
ドラマでは写真(未来と仁のツーショット写真)や10円玉の硬貨が登場しているが、原作では登場していない。これらは、仁の過去での貢献が、将来の医療技術が進化し、友永未来の状態が変わるという重要な変化を伝えてくれる。
こうした違いもあり、これからのストーリー展開には大きな違いも生じてくるのではないか、と考えられる。というのも、実は原作ではすでに「過去(幕末期)で暮らすことにした」として、現代に帰ることを放棄している。一方で、ドラマの方は上記のような「将来を変えて、友永未来を救う」という大きな目的があり、どうやら過去に止まることはしないのではないか、と考えられる。
上記二項を併せて考えると、
ただ、ドラマでは野風の存在がどう動いていくか分からない所もある。
原作では、野風は花魁を辞めて旦那の元へ行くと決意するも、乳癌を発症して手術を受ける。そのため、旦那から身請けを断られ、結果として仁の診療所に一時期、看護士として働こうとする。だが、仁を想う咲の気持ちを考え、フランス人貿易商と結婚することになる。
このあたりで、野風と友永未来、この二人の関係性がどのようになるのか、不明である。
冒頭で、現代に全身に外傷を負った(硬膜下血腫を起こし、仁が執刀する)が登場する。この男の頭部には、まるで胎児そのもののような胚細胞性腫瘍がみられている。この登場人物は、ドラマでも原作でも登場する。
一方で、その男の正体に関しては違いがある。その違いとは、
ドラマでは「坂本龍馬かも知れない」と仁は考えているようだ(『帰るがぜよ』といった土佐弁であることや、近江屋事件にて、額を切られたという史実と同様な傷を負っている、といったことから)。
原作では、仁自身がタイムスリップし、手術を受けたのではないか、と描かれている。救急バッグに必要なものをそろえて過去に帰とうとするという手際の良さや、腫瘍標本の入った瓶のありかを熟知していたことなどから、医療知識などもある本人ではないか、と考えられている。
ドラマでは、最初から坂本龍馬が街中を闊歩し、偶然、南方仁と出会う、という流れになっている。一方で、原作では最初に勝海舟に出会い、坂本龍馬を引き合わせられる、という流れになっており異なっている。
これらの違いもあり、ドラマでは最初から南方仁に好意的、援助を行うといったキャラクターになっているが、原作では懐疑的で正体を明かすように迫ったりする場面も登場する。
花街で出会った橘恭太郎(小出恵介)と初音(水沢エレナ)というエピソードは、原作にはない。ドラマでは、橘恭太郎が初音に見初めて、視力の悪い初音にメガネをプレゼントしている(演技上、眼球運動障害があるように見え、もしかしたら脳動脈瘤が存在しているのか。後に仁が執刀する、といった流れも考えられる)。
ちなみに、原作では、歌舞伎役者との子供を身籠もった初音が堕胎させられ、その際に負った傷が原因でDIC(播種性血管内凝固)を起こし、仁が治療を行っている(以後、登場はない)。
上記のような違いがある。原作を上手く活かし、なおかつ独自の視点から原作にプラスアルファを行い、見事にドラマ化を行っていると思われる。特に、時代のうねりの中にある幕末で、未来をどう変えていくのか、といったことに主眼がおかれたドラマ(もちろん、仁自身の個人的な友永未来との将来もあるが)は、展開が非常に気になるところである。
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かなりのネタバレ(原作未読の方)があるので、ご注意を。
友永未来(中谷美紀)の不在
ドラマでは、現代に友永未来という人物が存在する。しかしながら、原作では登場していない(花魁である野風は登場する)。
ドラマにて、友永未来は、南方仁(大沢たかお)の婚約者であり医師である(仁の後輩にあたる)。脳幹部に発生した腫瘍を、周囲の反対を押し切って自ら手術により除去しようと試みるが、結局は友永未来を植物状態にしてしまう。そのトラウマから、難易度の高い脳外科手術を避けるようになった、という設定が新たに設けられている。
一方で、原作では友永未来は登場していない。ただ、恋人はいたという設定になっている。しかしながら、婚約を申し込もうとしたが断られ、その際に恋人から返された指輪を過去(幕末)に持ってきており、それを橘咲(ドラマでは綾瀬はるか)に渡してプロポーズする、というシーンがある。
また、ドラマでは橘咲が麻疹にかかり、仁に命を救われたのを機に、医学の道に傾倒していく、というストーリーは割愛されている。
現代と過去を繋ぐ物品の不在
ドラマでは写真(未来と仁のツーショット写真)や10円玉の硬貨が登場しているが、原作では登場していない。これらは、仁の過去での貢献が、将来の医療技術が進化し、友永未来の状態が変わるという重要な変化を伝えてくれる。
こうした違いもあり、これからのストーリー展開には大きな違いも生じてくるのではないか、と考えられる。というのも、実は原作ではすでに「過去(幕末期)で暮らすことにした」として、現代に帰ることを放棄している。一方で、ドラマの方は上記のような「将来を変えて、友永未来を救う」という大きな目的があり、どうやら過去に止まることはしないのではないか、と考えられる。
上記二項を併せて考えると、
といった結末が考えられる。・原作=過去で咲と結ばれる。
・ドラマ=現代で未来と結ばれる。
ただ、ドラマでは野風の存在がどう動いていくか分からない所もある。
原作では、野風は花魁を辞めて旦那の元へ行くと決意するも、乳癌を発症して手術を受ける。そのため、旦那から身請けを断られ、結果として仁の診療所に一時期、看護士として働こうとする。だが、仁を想う咲の気持ちを考え、フランス人貿易商と結婚することになる。
このあたりで、野風と友永未来、この二人の関係性がどのようになるのか、不明である。
現代で全身の外傷を負った謎の男
冒頭で、現代に全身に外傷を負った(硬膜下血腫を起こし、仁が執刀する)が登場する。この男の頭部には、まるで胎児そのもののような胚細胞性腫瘍がみられている。この登場人物は、ドラマでも原作でも登場する。
一方で、その男の正体に関しては違いがある。その違いとは、
となっているようだ。・原作=南方仁
・ドラマ=坂本龍馬
ドラマでは「坂本龍馬かも知れない」と仁は考えているようだ(『帰るがぜよ』といった土佐弁であることや、近江屋事件にて、額を切られたという史実と同様な傷を負っている、といったことから)。
原作では、仁自身がタイムスリップし、手術を受けたのではないか、と描かれている。救急バッグに必要なものをそろえて過去に帰とうとするという手際の良さや、腫瘍標本の入った瓶のありかを熟知していたことなどから、医療知識などもある本人ではないか、と考えられている。
坂本龍馬(内野聖陽)と勝海舟(小日向文世)のキャラクター性
ドラマでは、最初から坂本龍馬が街中を闊歩し、偶然、南方仁と出会う、という流れになっている。一方で、原作では最初に勝海舟に出会い、坂本龍馬を引き合わせられる、という流れになっており異なっている。
これらの違いもあり、ドラマでは最初から南方仁に好意的、援助を行うといったキャラクターになっているが、原作では懐疑的で正体を明かすように迫ったりする場面も登場する。
橘恭太郎(小出恵介)と初音(水沢エレナ)
花街で出会った橘恭太郎(小出恵介)と初音(水沢エレナ)というエピソードは、原作にはない。ドラマでは、橘恭太郎が初音に見初めて、視力の悪い初音にメガネをプレゼントしている(演技上、眼球運動障害があるように見え、もしかしたら脳動脈瘤が存在しているのか。後に仁が執刀する、といった流れも考えられる)。
ちなみに、原作では、歌舞伎役者との子供を身籠もった初音が堕胎させられ、その際に負った傷が原因でDIC(播種性血管内凝固)を起こし、仁が治療を行っている(以後、登場はない)。
結
上記のような違いがある。原作を上手く活かし、なおかつ独自の視点から原作にプラスアルファを行い、見事にドラマ化を行っていると思われる。特に、時代のうねりの中にある幕末で、未来をどう変えていくのか、といったことに主眼がおかれたドラマ(もちろん、仁自身の個人的な友永未来との将来もあるが)は、展開が非常に気になるところである。
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